私の写真趣味が始まったきっかけのひとつに、父から受け継いだNikon F2というカメラがある。ご存知の通り、Nikon F2は1971年に発売されたNikonの一眼レフカメラです。
それが実家のキャビネットの中で長年眠っていることは何となく知っていたけど、特に興味を持って取り出してみたのは、10年ちょっと前のこと。世の中はもうひと通りデジタル化が進んで、デジカメは当然スマホも普及し、ハイブリッド車がその辺を走り回るのが当たり前の時代になってからだった。その頃、個人的に何かとアナログ的な物に惹かれるというか、関心を持つような時期があって、ふとそのカメラの存在を思い出したのだ。
そのカメラについて、当時は古い一眼レフカメラという印象しかなく、それが『Nikon F2』で、それがどんなカメラなのかという知識もなかった。最初に手にとってみた印象は、ずっしりとした重みを感じる金属製のボディ、手で操作する事ができるアナログなダイヤル類、そしてシャッター音…まさに機械という感じがした。そして見た目もかっこいいけど、こんなゴツゴツしたやつでちゃんと撮れるのだろうかという疑念もあった。早速、父から操作方法を教わり、いざ撮影。精巧な機械が作動する感触や、フィルムで写真を撮る懐かしさも相まって、とても刺激的な体験だった。ところが、長年放置されていた代償か、ファインダー部に動作不良があって快適に使うことが出来ず、フィルム数本分を撮影したところで、このカメラは一旦私の部屋のオブジェとなりました。
それから数年、まだコンデジを使っていて、ふとカメラ屋さんを訪れた時のこと。ちょうど富士フィルムのXpro2やX100Fが出た頃だったと思う。何となくそれらに興味を惹かれながらも、中古の商品棚にNikon F2のフォトミックファインダー整備品という物を見つけた。これはと思ってその場で購入して持ち帰り、取り替えてみたところ、こいつ…動くぞ!的な感じで見事に露出計が復活!こうして数年を経て、Nikon F2を私の愛機として使う準備が整ったのでした。
このカメラは当然マニュアル撮影しかできません。これを使いこなすためには、F値やシャッタスピード、ISO感度の関係とか、カメラに関する基本的なことを知る必要がありました。自分のイメージする露出になるよう各設定を合わせて撮影するのは、慣れるまで少々面倒な作業だったけど、そのプロセスが写真撮影への集中力を高め、その瞬間を意識して切り取る楽しみを教えてくれたような気がします。
そうやって試行錯誤しつつも、カメラを持って出かけることが増え、色々とカメラ関係の本を読み漁ったり、YouTubeを見たり、気がつけばカメラや写真にすっかりハマっていたという感じです。レンズ交換のできるデジタル機も手に入れ、レンズ沼というものにも少し浸かりました。
現在はデジタルがメインですが、フィルムカメラには、カメラの造りや操作感、写真の色合いや質感とか、何物にも代えがたい楽しみがあります。最近はフィルム価格も高騰していて、以前のように気軽に買うことはできませんが、できる限りは続けていきたいものです。
写真趣味のきっかけとなったこのカメラ、父が約50年前に購入した物。母曰く、当時はまだ新婚時代で安月給。それが突然高いカメラを買うものだから呆れたと言ってました。キャビネットからはNikkor-O・C Auto 35mm F2をはじめレンズが数本、他にニコマートFTNのボディもありました。父も沼の住人だったようですね。そんな大切なカメラ、これからも整備しながら大切に使っていこう。
ちなみに、父は今もNikonを使って写真を楽しんでいます。